成功は、不幸の始まり
失敗が自己評価を下げ、自尊心を傷つけるのであれば、成功は自己評価を上げるのか?というと、そんなに単純でも無い。
というのも成功とされる結婚や昇進、子供の誕生などで、精神的に不安になる人も多いのだ。
というのも、これは変化を伴う成功であり、変化があると、その変化に対応するためのストレスが発生する。
ここで自己評価の高低によって、大きな違いが出る。
というのも環境の変化を、どれだけコントロールできているか、ということだ。
自己評価が高い人は、環境の変化を、自分がある程度支配できていると考えるが、自己評価が低い人は、環境の変化は自分の努力や選択の結果では無いと考えている。
自己評価が高い人は、たとえ宝くじに当たるというようなことでも、自分がそのくじを買った結果だと考える。
つまりすばらしい結果の原因を作ったのは、自分だと考える。
一方、自己評価が低い人は逆に、幸運は自分の努力や選択の結果だとは思わない。
それは偶然の出来事であり、次は悪い運命が訪れると考えている。
また、昇進などの場合、昇進に伴う責任や周囲の期待がプレッシャーになり強いストレスを受けることになる。
注意深く真面目に仕事をしてきた結果、昇進できたのであるが、実はどんどん昇進するにつれて増す責任に、だんだん耐えられなくなっていく。
そういう風にいつまでも良いことは続かないと感じているわけだ。
つまり幸福は不安のはじまりであり、自己評価が低い人には幸福を素直に喜べない。
不安な幸福
これは「不安な幸福」と呼ばれる。
これは人生に対する自信のなさから生まれるもので、自分の人生に訪れる様々な試練にうまく対応する自信が無いと、「幸福は壊れやすいもの」という風に考える。
また別の現象として、成功して責任のある地位に就いたとき、「果たして自分はこの地位にふさわしいのだろうか?」と考え、まるで自分が詐欺をはたらいて地位を得たように感じてしまうこともある。
これは「詐欺師シンドローム」と呼ばれる。
能力の発達に比べて、自己評価の方が追いついていかない人に多い。
なので熟練者でも、自分では初心者だと思っていたりする。
詐欺師のシンドロームは、自己評価の高い人にも起こりうる。
たとえば異例の昇進を果たしたり、ヘッドハンティングで全く違う会社に異動したりすると、周囲の期待と責任に急激に自信を失い、不眠症になったりする。
ただし自己評価が高い人は、それでもなんとか立ち直るが、自己評価が低い人は、どんなに優れた能力を持っていても、慢性的な抑うつ状態に陥ったりする。
また自己評価が低い人は、褒め言葉にも弱い。
褒められてもきちんと対応ができず、困惑する。
自分自身に対して否定的なイメージを持つため、それと異なる指摘は、混乱をもたらす。
さらに、褒め言葉の後に来る言葉に警戒感を示す。
褒められた後は、けなされたり、褒められるに値する行動を求められると考え、それが果たせるかと不安になる。
こういった自己評価による行動の違いは、一人の人の中でも起こってくる。
つまり自分の得意分野であれば積極的に行動し、苦手分野であれば、消極的になるわけだ。
ただしそれでもやはり、総合的に自己評価が高い人は、いろんな事に挑戦するから、「自分の道」を見つけ出しやすい。
うまくいく方法や分野と、そうでない方法や分野がわかり、失敗する方法はやらなくなっていく。
一方、総合的に自己評価が低い人は、失敗のリスクを最小にするために行動が狭まり、挑戦回数が少ないために、自分の道を見つけられない。